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母ちゃんより怖い女に初めて会った 2

自宅待機って何そりゃいいのよ。
やっぱあれですか。
いらない子は自宅にひっそり引きこもってチャンスがあったら逝っちゃいなみたいな感じですか。
そんなことばっか考えながら毎日グッピー見ながら過ごしてた半月後、人事から電話。

辞令が正式に出たので受け取りに来いとのこと。
有終の美じゃないけど最後くらいはパリッとキメようとサロンで髪切って、ついでにひげもちゃんと剃ってもらおうと思ったら

「うちじゃ出来ないんですよ。」
となぜか断られ、うわっ、人生の敗残者には世間様も冷てぇなと、コンビニで安いシェーバー買って自分で適当に剃って余計にささくれた気持ちのまま出社した。

びっくり。
解雇されてないじゃん、俺。
主任補佐って、訳わからんクラスアップしてんですけど。
配属も変わってるし。
何これ?
なんてミラクルですか?

ホント訳わかんないすけど。
アホ面下げて新しい部署に向かった。
そしたらいたんだよ、嫁が。
しかもあっちも直属上司の主任にランクアップして。






嫁「××、十分休んだでしょう。今日からがっつり働いてもらうわよ。」
俺「先輩、どういうことなんですか!?」

嫁「指導付いてた頃言ったでしょう。あなたのミスは私のミスになるって。ミスしてない人間なら拾い上げなきゃ、無責任てもんじゃない?」

やられた。
また泣かされた。
これがどんな感じで恋愛に発展したかは希望があれば。
明日も早いので寝ます。
それでは。



どうも、587です。
当時俺が翻弄されてたことを少しだけ書かせてもらう。

業務内容なんだけど工場とかじゃなくて、んー、当たり障りのない風に書くとでっかい問屋というか、物を右から左に流す手伝いをする感じってことで。
俺のいたチームが取り組んでた商いってのがちょっとデリケートな地域にデリケートなものを売るのをサポートすることで、色々生臭い金も絡んでくるんだわ。
そんなんよくあることなんだけど。

現地からやっぱそんなもんいらん、でもギャランティは契約書に書いてあるとおりしっかり貰いますよと。
つまり契約不履行で金むしったるわと。
そんな問題を処理してました。
いや、何て言うんですか。
ぶっちゃけ『手数料』の額が折り合わねーって話です。
現地では商品は必要なもんだけど、当然ギャランティ入ってくるならいっか、つーかタダで銭貰えてラッキーくらいの感じ。

クライアントはどうしても商品を売り込みたい。
『手数料』スライドさせてでも売ってきてもらおうじゃないですか、♪♪さんと。
んでですね、渉外さんとは別にうちのチームで交渉して何とかシャンシャンまとめられることになりました。
が、
いつの間にやらその手数料がですね、上で承知してた額とものごっつ乖離したもんになっちゃってたんだわ。


額もそんなにでかくないし、うちが払うわけじゃない。
でもクライアントは身銭余計にきらなきゃいけなくなる。
商品本体自体かなーりお値打ち価格にしてるのに。
当然信用問題になるわけです。
仲介能力0っつーことですから。

結果から先に書いちゃうとアレなんだけど、俺の元カノ含めて数人が数字いじってました。
もうほんとおこずかいゲットだぜみたいなノリで。

今までもわからないよーにわからないよーにちょっとづつ、しかも内部監査に引っかからないくらい巧みに恒常的に抜いてたらしいんだわ。
そこに何も知らないおバカちゃん登場。

つまり俺です。
口答えせずに嫁にビタ付きで黙々と仕事覚えるバカマジメ。
そんな風に映ってたんだと思う。
元カノによく言われたもん。

「××クン偉いよねー。○○に何言われても口答えしないでスッて動いてたもんね。」

だって怖いし。
有無を言わさぬ無言の圧力っていうの?
そういう雰囲気を当時の嫁に感じてたんだから。
でもアホですから。
優しい顔してそんなこと言われてその気になって彼氏気取りですよ。
彼女にまでバカ扱いされてるとは思ってなかった。


嫁の指導期間も終わって、(本当は1年はかけると後に知る俺)ようやく嫁はいるけど他の人もいる『仕事』の出来るセクションに組み込まれますよって時に
元カノ「○○ちゃん、××ちょうだい?」

一夏かけて仕込んだのをかっさらうようにおねだりに来たんだと。
指導期間中なんてただの給与泥みたいなもんすから。
さぁ、今から馬車馬のように働いて利益出してもらおうかいって矢先に。
普通渡すか?
はい、速攻譲渡されました。

俺についてる間嫁の業務効率も明らかに落ちてるのわかってたから厄介払いされたんだと思ったし、
わーいカレーよりボルシチの方が好きっすってなもんよ。

腕組して無表情に俺のこと見てる嫁の前でいそいそ荷物まとめてセクション移動しました。
彼女も出来ました。
仕事も面白い。

でもな、元カノが俺に求めてたのは仕事する能力じゃなかったんだな。
スケープゴートを一年かけてじっくり太らして食べちゃいましょってだけだった。
可愛い女だと思ったんだけどなー。
今考えたらもう腹の中までまっくろくろすけですよ。

嫁の弁当食ってきます。



すまん。
食ったら御ご馳走様でしたのメールを嫁にいれなきゃならんので。
食いながら書く。

そして一部の機が熟した頃にこずかいアップ作戦発動されました。
あれじゃん。
バカがコンマパーセント帳票見間違えて報告書出したってことにすればよくね?
多分そんくらいの軽いノリで。

ロシア語なんてわかんない俺も俺ですが、わざと嘘教える元カノも元カノだよね。
ああ、わかってる。
四重五重に確認とらなかった俺が一番悪い。
でも二重三重に確認とった先輩まで俺のこと騙してるなんて思わないもん。
愛し愛されてると思ってた女に泥かぶってって泣かれてお願いされるし。
涙目で仕事するしかないっすよ。

そこに頃合見計らって現れたのが嫁だった。
嫁・・・・
恨むぜ・・・・
そういうことに使われるって予想してて俺のこと手駒に使ってました。
はい、いわゆる囮操作です。
取り敢えず俺突っ込んどけばボロ出すんだろってことで、即席で訳もわからんまま人身御供にされてたようだ


それは直属の部長も課長もコンプライアンス部も法務部も監査部も知ってましたとさ。
誤差の範囲で処理できない額の抜きを発生させるのを虎視眈々と待ってましたって話。

あの夜嫁が来たのは別にデータがどうこうとか帳簿がどうこうとかそういうのを調べに来たのじゃなく、そのままだと俺がぶっ壊れて人生そのものを退職しちまわないように、味方がいるぜって示しておくための個人的暴走行為だったらしい。

持ち帰った封筒の中身もほとんど白紙のコピー用紙だったんだって。
お願いしますよ、嫁。
そういう時は体でねぎらうとかさ、いくらでも方法あんじゃん。
付き合い始めてから聞いたら

嫁「はははは、私あの時あなたのことまだ好きでもなんでもなかったし。無理。」
さらっと流されましたが。

で、結局監査の方で同時進行ですごい規模の調査進めてたようで、元カノ含めて事情知らなかった人間以外ほとんどが懲戒解雇、依願退職、訓告プラス移動。
法務部長がキレてた辞表が必要ない云々は俺じゃなくて彼等だったってオチ。
天罰覿面かっかっかっと笑いたいところだったけど、しばらく経つまで事情伏せられてて知る由も無かった。
嵐は俺が自宅待機させられてる間に収まっちゃってて拍子抜けしました。

主任補佐ってのはアレですかね。
ご褒美?
手当てもなんもつかないけど。
勲章みたいなもんか。

て訳でトラブル内容と俺の本当の使われところはこんな感じでした。




妻と初めてした会話スレから来ました。
仕事の合間に書くので度々ブツ切りになるので悪しからず。

配属先は今までの業務とは関係ない比較的地味なところだった。
でも地味なクセしてクラクラするくらい専門知識が必要なもんで、また一から嫁の下で修行やり直し。
相変わらず黙々と後をついて回り、指示されたらダッシュで遂行、マッハで報告してました。
で、やっぱ部内であだ名つけられちゃって、それが情けないことに「チュウケン」。

もちろん中堅じゃない。
忠犬の方な。
別に屈辱だとも思わなかったし、辛くもなかった。
入社当時の冷徹さは相変わらずだったけど、一本筋が通ってるのはわかってたし、例の件で俺は嫁に助けてもらったと思っていたから。

気が付けばそんな日々が2年経過した。
お互いプライベートなこともほとんど話さないまま。
まぁ普通に上司と部下ですし、「アンタッチャブルでお願いします」みたいなオーラをまとった女なんで。
そこに波風と言うか、台風並の出来事があった。

嫁の海外支社への移動辞令。
栄転です。
憧れの女性総合職エリート街道驀進決定です。


ところがだ。
嫁辞令が発表された途端に部長のところにすっとんでいって

嫁「内示の際にお断りしたはずですが。」
部長「君、何言ってんの!**だよ?」

嫁「それが何か?」
部長「エリートコースじゃないか!」

嫁「お断りします。」
部長「そんなこと俺に言われたって!困るよ!」

そしたら嫁ツカツカ自分のデスクに戻っていきました。
**支社だもんな。
その後いくつか回ったら確実に部課長クラス確定じゃん。
そりゃ飲むわ。
つか断る理由がわからん。

そんなこと考えてたら嫁がまた部長のところにカッカッといって、手にしたものを一礼してから差し出した。

嫁「一身上の都合により**年**月末をもちまして退職させていただきます。」
部内全員「ええーーーっ!!!!!」

俺はびっくりしすぎて声も出せなかった。
辞めちゃうの?


退職願はひとまず部長預かりにはなったものの、残務整理と引継ぎをてきぱきこなして結局嫁は翌月末に退職してしまった。
送別会も固辞して春の雨の中普通に家に帰るように。

部内は部内で、一時何故?みたいな雰囲気になってて、
男と遠恋になるのがいやなんじゃないかとか、男多分いないし、みたいな無責任な噂が流れた。

俺も詳しい事情知らないのか?と上も含めて何人かに聞かれたが、知らないもんは答えようがないので黙っていた。
部内の雰囲気はすぐに元に戻った。

ある日のこと。
嫁の後任になったのがちょっと使えないお方で渉外さん(弁護士ね)にお渡しする資料を揃え損ねちゃって、
自分は誤りに行くの嫌だからなんてほざきやがるもんだから、嫁について回って顔がつないであった俺が詫びを入れに行くことになった。

弁「○○さんねぇ、なんでああいう子いなくなっちゃうかねぇ。」

非常に残念がられるくらい仕事出来たんだよなぁと思いながら出されたコーヒーをいただいてると、

弁「ああ、そうだ。○○さんの忘れ物あったんだった。うちにあっても何だから君返しといて。」

返しといてって言われてももう接点ないし。
でもそう言うわけにもいかないのでお預かりしますと答えた俺に渡されたのは一個のポーチだった。
ポーチ・・・っていうか・・・顔?
なんか白い熊の顔の形してんですよ。(後にコリラックマというキャラだと知る。)

ないないないないない。
これが嫁の私物なんてことは絶対あり得ない。
きょとんとしてると渉外さんも笑ってた。

弁「女の子だもんねぇ。こういうもんも持つんだねぇ。」

嫁を女の子って呼ぶ人間に初めて遭遇しました。


いや、預かったのはいいけどどうしたもんだか。
宅配で送っちゃってもいいんだけどそれも何だかなぁ。
そもそもまともに助けてもらった礼も言ってないし、電話してみっか。
メモリにまだ残ってた嫁の携帯に連絡してみました。

俺「お久しぶりです。××です。」
嫁「何・・・?」

うわー、相変わらず無愛想な女。
思わず苦笑いしちゃうくらいいつもどおりの応対に、

俺「今@@先生の事務所前なんですが、先生から先輩の私物をお預かりしまして。」
嫁「・・・私物・・・?」

俺「なんか熊の顔の形のポーチなんですけど、先生が先輩のものだとおっしゃっるものですからご確認をと思いまして。」

そしたら電話の向こうでガタッガッて音がして(ベッドから落ちたそうだ)、

嫁「★*$◎#¥!」
俺「はい?」

嫁「それっ、◎◎のポーチ!」

◎◎・・・・?
誰?
嫁の名前だった。
いわゆる姓じゃなく名の方。
道にブリーフケースぼとっと落とすくらい驚いた。


上司を下の名前で普通呼ばんし、そもそも嫁が自分を下の名前で呼ぶなんてあり得んと思ってたんだよ。

嫁「今日この後忙しい?」
俺「いえ、報告に戻って何もなければそのまま上がりますけど?」

嫁「##(会社最寄駅)だと誰かに見られちゃうしな・・・××は★★だよね?」
俺「はい。セカンドですけど。」

嫁「あははは。そうだったセカンド最寄。」

妙なこと覚えてんな、嫁。

嫁「そうするとファースト最寄は☆☆?」
俺「そうですけど、ファースト最寄って・・・」

嫁「セカンド最寄があるならファースト最寄もありなんじゃないの?」

俺、笑いをこらえ切れずに吹き出しちゃいました。
何だかちょっとムッとした声で、

嫁「19:30頃時間ある?取りに行っても大丈夫かな?」
俺「いいですよ。時間がずれると大変なのでスタバで待ってていただいていいでしょうか?」

嫁「OKです。ごめんね。」

久しぶりに嫁と会うことになりました。

<続く>

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