寝取られた上に悪者にされたが結果的に…2
俺のアパートの部屋の構造だが、1DKの6畳間だ。
そして、キッチンとメイン部屋の間はドアで仕切られているのだが、このときドアは全開になってた。
ベッドから俺のいた通路のかげは死角になってて、見えにくい。
態度がおかしくなる前の彼女も、よくそこに隠れては急に現れ、おどかしっことかして無邪気に遊んでた。
そのかげを利用して、声の聞こえるベッドの方を静かに目を凝らして見る。
カーテンが閉められて薄暗い室内だったが、西日もあり、状況を視認できた。
全裸で四つんばいになった彼女が、Fカップの大きな胸をぷるぷる揺らしながらあんあん言ってる。
後ろから、顔はよく見えないが茶髪アフロの細身の男が、後ろから四つんばいの彼女の腰を持ったり、ときどき胸をもんだりして、
「はぁっ、気持ちいい!俺あやみのこと一生大事にするから!」とか叫んでる。
叫ぶたびにアフロがわっさわっさ揺れてた。
目の前が真っ暗になった。
頭にキンッキンッって変な金切り音みたいなのが響いた。
脚が震えて、気持ち悪くなった。
立っていられなくなった。
腰が抜けたってやつなのかな。
がんばって音が出ないよう静かに静かに、その場に座り込みつつ、しかしかげから体が出ないように、引き続き様子を見ながらじっと耐えた。
「俺とするときは、あんなに声出してくれないのに・・・あぁ、そもそもこの会社に入ってから2ヶ月、一回もさせてもらってなかったわ」
くらくらしながらも、そんなことを考えてたのを覚えてる。
「あやみ、最後あやみの顔見てキスしながら一緒に・・・」
男が小声で、たぶんこんなことを言ってたんだと思うが、彼女に言った。
彼女も「えへへ・・・うれしい・・・たっくん、いっぱいギュッてしてね」言い返してた。
すごい吐き気に襲われたが、がまんし、音も出ないように引き続き見守った。
正常位になった。
向きも変わり、男の背中しか見えなくなった。
しかもそのまま男が彼女に抱きつくようになり、彼女の見える部分は開いた脚と、男の背中を抱きしめる腕だけになった。
「俺、こんな幸せなの初めてだ!俺あやみのためなら何でもできるよ!」
叫びながらブリュッブリュッて音をたて、腰を動かしてる。
「たっく・・・がっ一緒にいっ、いてっくれっればっっ、ああっ」
彼女も返してる。二人ともすごく幸せそうだ。
「うああああっ!!!」
男が叫び、腰の動きが止まった。精液を搾り出すように、腰が微妙に動いてた。
「ふぅっ、んんっ・・・」
切ない声をあげながら、男の背中を、彼女がさらにギュッと力を込めて抱きしめたのがよく見えた。
まだ混乱してる俺を、さらにどん底に落とす一言が聞こえた。
「はぁ・・・はぁ・・・ねぇ、ほんとに中に出しちゃって大丈夫だったの?」
「大丈夫だよ、私ちゃんと勉強して、生でも大丈夫な日とか知ってるから。今日は絶対大丈夫な日だから。」
「うん・・・まぁでも、もし出来ちゃっても、それはそ れで嬉しいかな。ずっとあやみと一緒にいられるじゃん。へへっ」
「そんなん言ったら、うれしくなっちゃうじゃん・・・」
言いながら、男の背中にまわしてる手にまた力が入ってるのが見えた。
俺はゴム無しでしたことはありません。
「生かぁ・・・気持ちいいんだろうなぁ・・・」
そんなことを考えてました。現実逃避してたのかな。
耐え切れなくて、えづいてしまい、声を漏らしながらその場で泣いてしまった。
その声が聞こえてしまったようで、
男「何の音?」
彼女「え・・・なになに?」
そんな声が聞こえた。
やばい!この場を去らないと!
思うも、腰が動かない。体が言うことをきかなかった。
男がベッドを離れ、こっちに来た。姿を見られた。覗き見してたのがバレてしまった。
俺はくしゃくしゃになった顔で男を見た。
涙でよく見えなかったが、男はやばいって顔をしてた。
声にならない声をあげてた。
そりゃそうだ。だってその男、俺が知ってる人だもん。
会社の、別部署の先輩だったんだ。
なんで特徴的な髪型で気づかないんだろうな。
先輩「お、おう・・・帰ったんだ。お帰り」
そんなことを言ってた。
彼女が「なに、どうしたの?」
って怪訝そうな顔をのぞかせたが、俺と目が合って、すごい勢いで顔色が変わってた。少しずつ感覚が戻ってきて、立ち上がった。
俺「ここ・・・僕の家ですよね?なんでいるんですか?」
先輩「いや、こいつ(彼女)が合鍵持ってるから入れるじゃん」
俺「あ、そっか・・・すみません散らかってて」
先輩「え、あぁ、いやいい部屋じゃん、いいとこ見つけたね」
どうも状況にそぐわない会話をしてた。
俺は何を話せばいいか分からなかったんだ。
彼女が、途中で話に割って入ってきた。
「なんでいるの?水曜日まで帰ってこないんじゃなかったの!?ねえ、どういうことなの!?」
フルテンションでキレてた。
胸ぐらつかまれるような勢いでまくしたてられ、俺はおびえながら
「ごめん、悪気は無かったんだけど・・・いるはずの無い俺が、急にあやちゃん(彼女)の前に姿を現して、やーんうれしい、みたいな反応を期待してたんだ」
と、がんばって声を出して言ったんだ。
彼女「はぁ!?バカじゃないの!うそついて、許されると思ってんの!?あんた何様のつもり!?」
ほかにもいろいろ言われた。お願いだから胸を隠して何か着てくれ。
そう思った。
先輩「わり、ちょっと俺用事思い出した、帰らないと・・・」
急に帰ろうとする先輩。
だんだんと気持ちも元に戻ってきた。状況を理解し、俺がキレていい場面なんだと理解した。
俺「いや、それは無いですよね、このままで終われるわけないですよね!?」
服を着てる先輩の腕をつかんだ。だが、いかんせん感覚が戻りきってない。
俺の腕がなんか震えてて、力がいまいち入らなかった。
急に先輩が牙をむきだした。
先輩「うるせぇーー!いい大学出てるくらいで何やってもいいと思ってんのか!あぁん!?」
冷静に思い返すと、先輩も彼女も、どう考えても発言が状況を理解してないんだよね。
「たっくん、もういいからやっちゃってよ!」
なんと彼女が先輩をけしかけてる。
先輩は近くにあった、封の開いたじゃがりこを俺にぶちまけてきた。
だが、その攻撃は、冷静を取り戻した俺には効果はいまひとつだった。
「あぁ、もうこれは完全に俺がキレていい状況だ。」
思うが早いか、先輩を両手で突き飛ばした。
腰の入った、いい双掌打だ。
たまらず先輩はのけぞる。
キックでの試合の感じで、「ここから右前蹴り、部屋の壁まで吹っ飛ばしたら、距離をつめて首つかんで膝蹴り地獄だ」と思ったが、なんと彼女が俺に抱きついてきた。
「たっくん逃げて!こいつ頭おかしくなってるから!逃げて!!」
先輩は部屋を回りこむようにして逃げていった。
捕まえようとしても、無理に彼女の手を引き剥がしたら、彼女がケガしてしまう。
そんなことを考えたら、何もできなかった。
今思えば、あんなクソビッチ、顔に一生残る傷でもつけてやればよかったんだがな。
先輩に逃げられた。俺と彼女が残された。
ひとつひとつ確認していく。
俺「ねぇ、俺らって付き合ってるよね?」
彼女は一転、しおらしく
「だってしょうが無いじゃん!私だって忙しくて大変でさみしくていろいろふじこ」
俺「うん、ごめん俺がいい彼氏じゃなかったんだよね。本当にごめん。でもさ、でもさ、ここ、俺の部屋でしょ?なんで俺の部屋でするの?」
彼女「だってしょうがないじゃん!私の家で出来ないしラブホなんかお金もったいないし、たっくんだって私と将来本気で考えてくふじこ」
俺「ねぇ、先輩とはいつからそういう関係だったの?」
彼女「いつとか関係ない!あんたみたいな男につかまって、私ほんとにかわいそうだよ!」
俺「俺がこの会社入って少ししてから、メールとかくれなくなったよね。やっぱり、その時にはそういうことだったの?」
彼女「うるさい!うるさい!全部あんたが悪い!うあーーん!」
ダメだ、泣き出してまったく話にならない。
疲れたし、部屋もいか臭いし、一人になりたくなったから、もう服を着せて帰すことにした。
そしたら、彼女がホームラン級の発言。
「あんたとはもう結婚できない。これって婚約破棄だよね。慰謝料、絶対もらうから!」
ポカーンとしてる俺を置いて彼女は帰った。
その後、彼女から彼女フィルターがかかりまくった説明を受けて、俺を完全な悪者と思ってた社長に事実を説明したり、何もかもいやになって首を吊ろうと思ったりした。
俺の親の反対を押し切って大企業から零細に入ってきて、その際に親からは絶縁めいたことまで言われてる。
俺に帰る場所なんて無かった。
世間知らずな俺は、
「すでに2社目だ、この会社を辞めたらもうどこの会社にも転職できない。イヤでも仕事を続けるしかない」
そう思って、婚約破棄の慰謝料請求も、先輩の告訴も、全部やめた。
しかも、社長から
「俺が自信持って引っ張ってきた男が、彼女を寝取られるような腑抜けなんてバレたら、俺の威厳に傷がつく。お前、このことは黙っておけよ」
とまで言われた。
辛くても、言うとおりにした。
すでに寝取られてるのに、「いやあ、毎日ラブラブですよ」とほかの社員にウソまでつき続けた。辛かった。
だが、実は意味がなかった。
寝取り先輩が「あいつの彼女寝取ったったwwww」と言いふらしまくってたんだ。
「仕事できんくせに学歴を鼻にかけて調子にのった罰だ。」
という見方が大勢だったらしい。社員の人たちは、さぞかしメシウマだったことだろう。
彼女も社長も先輩も、誰一人キズはつかなかった。
俺が自殺を考えるレベルのキズを負った程度で事件は収束しんだ。
その後、中国、韓国、台湾あたりを出張で行きまくった。
赤字経営の会社だから、時には自腹で航空券を買った。
給料は上がらず、仕事にかかる支出と生活費がかさみ、貯金を切り崩し続けた。
そんな時、台湾で一人の女性と知り合い、韓国嫌い同士意見が合い、付き合うようになった。
その後会社を辞め、飲食店と翻訳のバイトをしながら糊口をしのいできた。
今は彼女との結婚まで考えてる。
台湾では親は偉大であり、そんな親から絶縁されてる俺は、結婚には不適格と見られるらしい。
だから、まずは親の説得、復縁が急務だ。
あとは・・・今の彼女に少しは贅沢させてあげられるように収入を増やしたいな。
台湾の女性は金に汚いとか2ちゃんでスレが立ってるが、俺の彼女は俺の収入状況も生活水準もよく理解したうえで結婚の話をさせてくれてる。
一生大事にしていくつもりだ。
蛇足だけど、その会社のその後…
俺が辞めた後、ある社員が労基にたれこみ、劣悪な労働環境が発覚したらしい。
未払い残業代の支払いなんかも命じられ、また監督署に提出する資料(つじつま合わせとかね)の準備で追われ、仕事にならんかったみたい。
大幅な減収減益、そしてこれだけはするまい、と言ってたリストラを実行したんだと。
寝取り先輩もその対象だった。
社長の娘とは付き合いかけたが、やはり社長の学歴コンプのふるいにかけられ、
「会社を辞めるか娘から手を引くか、好きな方を選べ」とか言われたんだと。
娘と別れ、会社もクビに。まぁ結局どちらも失ったわけだ。
娘は、短大を卒業して無事とある病院に勤務したが、院内淫行が発覚してクビになった。今は無職らしい。
まぁ、今となってはどうでもいい。
台湾の彼女だけを見続け、こんな情けない甲斐性のない俺を一生支えるって言ってくれた彼女を、俺は一生かけて幸せにする。
復讐と言えば復讐になるかな。
俺がやめたら、中国と台湾の仕入先はいっせいに会社から手を引いたんだって。
俺が担当だったから、よくしてくれたしわがままも聞いてくれた。
上司は人間として信用できないらしく(中国人にそこまで言われるのはよっぽど)また、別口でおいしい客を見つけたんだと。
今も、その工場長とはチャットとかしてるんだ。
会社は薄給でよく働く便利な奴と、割のいい仕入先を失い、また残業代なんて特別支出。
先輩はまぁ当時で30台後半だし、スキルもないので、今後は絶望的だろうね。
どうも彼女は前の会社の収入、将来性を俺に期待してたらしく、この会社に入ってそれは望めなくなったことを実感した。そんな時に先輩が「あいつは仕事ができない、あやみも大変だよな」とか、ことあるごとに連絡し、寝取るに至ったんだそうだ。
別の社員からの又聞きなんだけどね。
俺がこの会社に入るのを強く推したのも彼女なんだけどね。
社長は自分とこの会社が相当にやばいと実感してた。
だから、娘を使って一発逆転を図れる人材を確保したんだ。
でも、自分に不都合な人間だと悟った瞬間、「次期社長」から「都合のいい奴」に扱いを変えられたよ。
俺の弱さ、情けなさにいらついてるみんなには、ほんとに申し訳ない。
俺はこれがあったから今の彼女に会えたんだって本気で思ってる。
つらかったとは思うし、前の会社にいれば今頃は・・・なんて思うこともあるが、今は今でしっかり前を向いて歩けてるんだ。
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そして、キッチンとメイン部屋の間はドアで仕切られているのだが、このときドアは全開になってた。
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態度がおかしくなる前の彼女も、よくそこに隠れては急に現れ、おどかしっことかして無邪気に遊んでた。
そのかげを利用して、声の聞こえるベッドの方を静かに目を凝らして見る。
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後ろから、顔はよく見えないが茶髪アフロの細身の男が、後ろから四つんばいの彼女の腰を持ったり、ときどき胸をもんだりして、
「はぁっ、気持ちいい!俺あやみのこと一生大事にするから!」とか叫んでる。
叫ぶたびにアフロがわっさわっさ揺れてた。
目の前が真っ暗になった。
頭にキンッキンッって変な金切り音みたいなのが響いた。
脚が震えて、気持ち悪くなった。
立っていられなくなった。
腰が抜けたってやつなのかな。
がんばって音が出ないよう静かに静かに、その場に座り込みつつ、しかしかげから体が出ないように、引き続き様子を見ながらじっと耐えた。
「俺とするときは、あんなに声出してくれないのに・・・あぁ、そもそもこの会社に入ってから2ヶ月、一回もさせてもらってなかったわ」
くらくらしながらも、そんなことを考えてたのを覚えてる。
「あやみ、最後あやみの顔見てキスしながら一緒に・・・」
男が小声で、たぶんこんなことを言ってたんだと思うが、彼女に言った。
彼女も「えへへ・・・うれしい・・・たっくん、いっぱいギュッてしてね」言い返してた。
すごい吐き気に襲われたが、がまんし、音も出ないように引き続き見守った。
正常位になった。
向きも変わり、男の背中しか見えなくなった。
しかもそのまま男が彼女に抱きつくようになり、彼女の見える部分は開いた脚と、男の背中を抱きしめる腕だけになった。
「俺、こんな幸せなの初めてだ!俺あやみのためなら何でもできるよ!」
叫びながらブリュッブリュッて音をたて、腰を動かしてる。
「たっく・・・がっ一緒にいっ、いてっくれっればっっ、ああっ」
彼女も返してる。二人ともすごく幸せそうだ。
「うああああっ!!!」
男が叫び、腰の動きが止まった。精液を搾り出すように、腰が微妙に動いてた。
「ふぅっ、んんっ・・・」
切ない声をあげながら、男の背中を、彼女がさらにギュッと力を込めて抱きしめたのがよく見えた。
まだ混乱してる俺を、さらにどん底に落とす一言が聞こえた。
「はぁ・・・はぁ・・・ねぇ、ほんとに中に出しちゃって大丈夫だったの?」
「大丈夫だよ、私ちゃんと勉強して、生でも大丈夫な日とか知ってるから。今日は絶対大丈夫な日だから。」
「うん・・・まぁでも、もし出来ちゃっても、それはそ れで嬉しいかな。ずっとあやみと一緒にいられるじゃん。へへっ」
「そんなん言ったら、うれしくなっちゃうじゃん・・・」
言いながら、男の背中にまわしてる手にまた力が入ってるのが見えた。
俺はゴム無しでしたことはありません。
「生かぁ・・・気持ちいいんだろうなぁ・・・」
そんなことを考えてました。現実逃避してたのかな。
耐え切れなくて、えづいてしまい、声を漏らしながらその場で泣いてしまった。
その声が聞こえてしまったようで、
男「何の音?」
彼女「え・・・なになに?」
そんな声が聞こえた。
やばい!この場を去らないと!
思うも、腰が動かない。体が言うことをきかなかった。
男がベッドを離れ、こっちに来た。姿を見られた。覗き見してたのがバレてしまった。
俺はくしゃくしゃになった顔で男を見た。
涙でよく見えなかったが、男はやばいって顔をしてた。
声にならない声をあげてた。
そりゃそうだ。だってその男、俺が知ってる人だもん。
会社の、別部署の先輩だったんだ。
なんで特徴的な髪型で気づかないんだろうな。
先輩「お、おう・・・帰ったんだ。お帰り」
そんなことを言ってた。
彼女が「なに、どうしたの?」
って怪訝そうな顔をのぞかせたが、俺と目が合って、すごい勢いで顔色が変わってた。少しずつ感覚が戻ってきて、立ち上がった。
俺「ここ・・・僕の家ですよね?なんでいるんですか?」
先輩「いや、こいつ(彼女)が合鍵持ってるから入れるじゃん」
俺「あ、そっか・・・すみません散らかってて」
先輩「え、あぁ、いやいい部屋じゃん、いいとこ見つけたね」
どうも状況にそぐわない会話をしてた。
俺は何を話せばいいか分からなかったんだ。
彼女が、途中で話に割って入ってきた。
「なんでいるの?水曜日まで帰ってこないんじゃなかったの!?ねえ、どういうことなの!?」
フルテンションでキレてた。
胸ぐらつかまれるような勢いでまくしたてられ、俺はおびえながら
「ごめん、悪気は無かったんだけど・・・いるはずの無い俺が、急にあやちゃん(彼女)の前に姿を現して、やーんうれしい、みたいな反応を期待してたんだ」
と、がんばって声を出して言ったんだ。
彼女「はぁ!?バカじゃないの!うそついて、許されると思ってんの!?あんた何様のつもり!?」
ほかにもいろいろ言われた。お願いだから胸を隠して何か着てくれ。
そう思った。
先輩「わり、ちょっと俺用事思い出した、帰らないと・・・」
急に帰ろうとする先輩。
だんだんと気持ちも元に戻ってきた。状況を理解し、俺がキレていい場面なんだと理解した。
俺「いや、それは無いですよね、このままで終われるわけないですよね!?」
服を着てる先輩の腕をつかんだ。だが、いかんせん感覚が戻りきってない。
俺の腕がなんか震えてて、力がいまいち入らなかった。
急に先輩が牙をむきだした。
先輩「うるせぇーー!いい大学出てるくらいで何やってもいいと思ってんのか!あぁん!?」
冷静に思い返すと、先輩も彼女も、どう考えても発言が状況を理解してないんだよね。
「たっくん、もういいからやっちゃってよ!」
なんと彼女が先輩をけしかけてる。
先輩は近くにあった、封の開いたじゃがりこを俺にぶちまけてきた。
だが、その攻撃は、冷静を取り戻した俺には効果はいまひとつだった。
「あぁ、もうこれは完全に俺がキレていい状況だ。」
思うが早いか、先輩を両手で突き飛ばした。
腰の入った、いい双掌打だ。
たまらず先輩はのけぞる。
キックでの試合の感じで、「ここから右前蹴り、部屋の壁まで吹っ飛ばしたら、距離をつめて首つかんで膝蹴り地獄だ」と思ったが、なんと彼女が俺に抱きついてきた。
「たっくん逃げて!こいつ頭おかしくなってるから!逃げて!!」
先輩は部屋を回りこむようにして逃げていった。
捕まえようとしても、無理に彼女の手を引き剥がしたら、彼女がケガしてしまう。
そんなことを考えたら、何もできなかった。
今思えば、あんなクソビッチ、顔に一生残る傷でもつけてやればよかったんだがな。
先輩に逃げられた。俺と彼女が残された。
ひとつひとつ確認していく。
俺「ねぇ、俺らって付き合ってるよね?」
彼女は一転、しおらしく
「だってしょうが無いじゃん!私だって忙しくて大変でさみしくていろいろふじこ」
俺「うん、ごめん俺がいい彼氏じゃなかったんだよね。本当にごめん。でもさ、でもさ、ここ、俺の部屋でしょ?なんで俺の部屋でするの?」
彼女「だってしょうがないじゃん!私の家で出来ないしラブホなんかお金もったいないし、たっくんだって私と将来本気で考えてくふじこ」
俺「ねぇ、先輩とはいつからそういう関係だったの?」
彼女「いつとか関係ない!あんたみたいな男につかまって、私ほんとにかわいそうだよ!」
俺「俺がこの会社入って少ししてから、メールとかくれなくなったよね。やっぱり、その時にはそういうことだったの?」
彼女「うるさい!うるさい!全部あんたが悪い!うあーーん!」
ダメだ、泣き出してまったく話にならない。
疲れたし、部屋もいか臭いし、一人になりたくなったから、もう服を着せて帰すことにした。
そしたら、彼女がホームラン級の発言。
「あんたとはもう結婚できない。これって婚約破棄だよね。慰謝料、絶対もらうから!」
ポカーンとしてる俺を置いて彼女は帰った。
その後、彼女から彼女フィルターがかかりまくった説明を受けて、俺を完全な悪者と思ってた社長に事実を説明したり、何もかもいやになって首を吊ろうと思ったりした。
俺の親の反対を押し切って大企業から零細に入ってきて、その際に親からは絶縁めいたことまで言われてる。
俺に帰る場所なんて無かった。
世間知らずな俺は、
「すでに2社目だ、この会社を辞めたらもうどこの会社にも転職できない。イヤでも仕事を続けるしかない」
そう思って、婚約破棄の慰謝料請求も、先輩の告訴も、全部やめた。
しかも、社長から
「俺が自信持って引っ張ってきた男が、彼女を寝取られるような腑抜けなんてバレたら、俺の威厳に傷がつく。お前、このことは黙っておけよ」
とまで言われた。
辛くても、言うとおりにした。
すでに寝取られてるのに、「いやあ、毎日ラブラブですよ」とほかの社員にウソまでつき続けた。辛かった。
だが、実は意味がなかった。
寝取り先輩が「あいつの彼女寝取ったったwwww」と言いふらしまくってたんだ。
「仕事できんくせに学歴を鼻にかけて調子にのった罰だ。」
という見方が大勢だったらしい。社員の人たちは、さぞかしメシウマだったことだろう。
彼女も社長も先輩も、誰一人キズはつかなかった。
俺が自殺を考えるレベルのキズを負った程度で事件は収束しんだ。
その後、中国、韓国、台湾あたりを出張で行きまくった。
赤字経営の会社だから、時には自腹で航空券を買った。
給料は上がらず、仕事にかかる支出と生活費がかさみ、貯金を切り崩し続けた。
そんな時、台湾で一人の女性と知り合い、韓国嫌い同士意見が合い、付き合うようになった。
その後会社を辞め、飲食店と翻訳のバイトをしながら糊口をしのいできた。
今は彼女との結婚まで考えてる。
台湾では親は偉大であり、そんな親から絶縁されてる俺は、結婚には不適格と見られるらしい。
だから、まずは親の説得、復縁が急務だ。
あとは・・・今の彼女に少しは贅沢させてあげられるように収入を増やしたいな。
台湾の女性は金に汚いとか2ちゃんでスレが立ってるが、俺の彼女は俺の収入状況も生活水準もよく理解したうえで結婚の話をさせてくれてる。
一生大事にしていくつもりだ。
蛇足だけど、その会社のその後…
俺が辞めた後、ある社員が労基にたれこみ、劣悪な労働環境が発覚したらしい。
未払い残業代の支払いなんかも命じられ、また監督署に提出する資料(つじつま合わせとかね)の準備で追われ、仕事にならんかったみたい。
大幅な減収減益、そしてこれだけはするまい、と言ってたリストラを実行したんだと。
寝取り先輩もその対象だった。
社長の娘とは付き合いかけたが、やはり社長の学歴コンプのふるいにかけられ、
「会社を辞めるか娘から手を引くか、好きな方を選べ」とか言われたんだと。
娘と別れ、会社もクビに。まぁ結局どちらも失ったわけだ。
娘は、短大を卒業して無事とある病院に勤務したが、院内淫行が発覚してクビになった。今は無職らしい。
まぁ、今となってはどうでもいい。
台湾の彼女だけを見続け、こんな情けない甲斐性のない俺を一生支えるって言ってくれた彼女を、俺は一生かけて幸せにする。
復讐と言えば復讐になるかな。
俺がやめたら、中国と台湾の仕入先はいっせいに会社から手を引いたんだって。
俺が担当だったから、よくしてくれたしわがままも聞いてくれた。
上司は人間として信用できないらしく(中国人にそこまで言われるのはよっぽど)また、別口でおいしい客を見つけたんだと。
今も、その工場長とはチャットとかしてるんだ。
会社は薄給でよく働く便利な奴と、割のいい仕入先を失い、また残業代なんて特別支出。
先輩はまぁ当時で30台後半だし、スキルもないので、今後は絶望的だろうね。
どうも彼女は前の会社の収入、将来性を俺に期待してたらしく、この会社に入ってそれは望めなくなったことを実感した。そんな時に先輩が「あいつは仕事ができない、あやみも大変だよな」とか、ことあるごとに連絡し、寝取るに至ったんだそうだ。
別の社員からの又聞きなんだけどね。
俺がこの会社に入るのを強く推したのも彼女なんだけどね。
社長は自分とこの会社が相当にやばいと実感してた。
だから、娘を使って一発逆転を図れる人材を確保したんだ。
でも、自分に不都合な人間だと悟った瞬間、「次期社長」から「都合のいい奴」に扱いを変えられたよ。
俺の弱さ、情けなさにいらついてるみんなには、ほんとに申し訳ない。
俺はこれがあったから今の彼女に会えたんだって本気で思ってる。
つらかったとは思うし、前の会社にいれば今頃は・・・なんて思うこともあるが、今は今でしっかり前を向いて歩けてるんだ。
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