八方美人の彼氏が急に嫌になった
流血沙汰とかあったわけじゃないから修羅場かどうか微妙なんだけど
彼氏がすっごく優しい人だった。
大学のサークルで知り合ったんだけど「仏」と言われるくらい優しい慈愛の人で、みんな
「A(=彼)は優しいから」
「人のことほっておけない人だから」
って言ってた。
半年くらいサークルで活動するうちに、本当に本当に優しい人だっていうことがわかって、向こうから告白されて付き合うようになった。
なんていうか「自分の身を呈しても誰かをかばうのが当たり前の人」で、
喧嘩の仲裁に入って、自分が殴られても相手を気遣うとか
そんなようなことはしょっちゅうの人だった。
彼はいつもそんなでよく他人の面倒みてたから、デートがドタキャンになることもよくあったけどそれは
「仕方ないよね」
「ああ、彼ってやっぱり困った人をほっとけないいい人☆」
と思ってた。
そして付き合って一年。
それまで一度も遠出したことなかったから、記念に一泊温泉旅行に行こうよと彼と盛り上がった。
いつものように彼は忙しそうだったから私が計画をたてて、宿を探して、予算内のところがあったから彼にURL送って
「いいんじゃない」
ってことでそこに予約を入れた。
ところが当日、車で彼のアパートまで迎えに行くと
彼の横には見たこともない女の子が。
誰????
彼が言うには彼の学部の後輩らしい。ゴスロリっぽい恰好の女の子。
彼の服の裾をぎゅーっと握って離さない。
「これから温泉行くんだけど…」
という私をものすごい目でにらむ女の子。
彼氏は
「ゴメン、置いてくわけにもいかないから…一緒にいいかな」
私が思わずイヤな顔してるのに気づいたのか、彼氏が顔を近づけて
「悩みがあるらしいんだ。死にたいくらいの悩みだっていうから、ほっておけないじゃん。な?」
とささやいてくる。
その間、女の子は「先輩に近づくな!」という形相で私を睨みまくってる。
「あの子と三人じゃいやだよ。あの子のことぜんぜん知らないし」
と彼にささやきかえしたら
彼氏はいきなりハリキリ
「そうだよね!」
と言いざま、携帯であちこちに電話し
その後輩の友達をかき集めだした。
三時間後、同じようなゴスロリ女の子がさらに2人集まって、出発進行。
テンション高いのは一番最初にいたゴスロリ子(以下A子)と彼氏だけで、彼氏にいいように言われて集められた?らしい他2人(B子・C子)は恐縮しきって私に気をつかいまくっていた。
宿について、さいわい空き部屋はまだあったんだけど、私たちが予約しておいた「離れで、専属露天風呂あり、食事のランクも上」っていう部屋はもうふさがってる。
当然予約した私と彼氏が離れの部屋に泊まるところなんだけど
A子「ええ?A子ランク下の部屋なんていやー!先輩と離れるなんてA子いやー!びえぇーん!」とフロントで騒ぎだした。
「びえーん」と擬音をそのまま口で言う人を初めて見た。
フロントにいた従業員も、ロビーにいた人も唖然とこっちを見てて恥ずかしかった。
B子とC子は真っ赤になって
「やめなよA子」
「そもそもうちら、邪魔してる立場なんだから…」
と止めていたが、A子はなおも口で「びえーん!びえーん!」と両手を目にあてて擬音連呼。
彼氏はといえば、A子の両肩を抱いてこっちを見てにやにや笑ってる。
「俺は悪くないよね?A子がワガママなだけだから仕方ないよね?」
って言いたげなのがみえみえで、それまで意識してなかったけど無意識に今まで積りつもって溜まってたものもあったらしく、そこで急にいろいろ嫌になった。
「わかった、そっちの部屋は彼くんとA子ちゃんで使っていいよ。
私はB、C子ちゃんと竹クラスの部屋に泊まる」
って言った途端、彼氏はほっとした顔になって、A子は両目から手を離した。
その後、それぞれの客室に離れてから
「松部屋と竹部屋じゃ料金2万以上違うから、そっちで払ってね。
あと私と彼くんはもう他人だから、今後二度と話しかけないで。
観光もそっちはそっちで別行動にしてちょうだい。
帰りも私の車には乗せないから2人で勝手に帰ってね☆」
とメールし、旅館の従業員に
「あの2人に私たちの客室を教えないことと、廊下を渡ってこっちの棟に来ようとしたら止めてください」
お願いした。
多めにチップを払おうとしたら「よくあることですから」と固辞された。
よくあることなのか…。
その晩、私たち女三人はお互いに迷惑かけたことを謝罪しあったあと、たっぷり温泉に入り、お刺身や魚介のてんぷらを食べビールを飲んでいい気持ちになり、彼氏の八方美人ぶりを肴にガールズトークしてから安らかに眠った。
翌朝も
「A子は11時前に起きたことない子だから大丈夫です」
とB,C子に言われ、おいしい朝ごはんを食べてから、朝風呂を堪能し、旅館を出て、私の車であちこち観光して写真を撮りまくって帰った。
B、C子は恰好こそゴスだけどとてもいい子たちでした。
その間携帯の電源はずっと切ってた。
彼とA子は三日後に戻ってきたらしい。
寝過ごしてもう一泊するはめになったのに、二日分の宿泊代が払えなくて親を呼びだしたりしてすったもんだしたそうな。
私は旅行から帰ってすぐ親しい友達には
「こういうことがあって彼と別れた」
と報告したんだけど、彼氏とA子が宿代払えずに大ごとになったことが大学に洩れたらしく、情報が錯綜して、いつの間にか
「彼氏とA子が心中旅行に行ったのに、私が身元引受人にされた」
という噂に発展していた。
その後卒業するまで、噂を打ち消すのに苦労しました。
彼氏からは復縁を迫られたけど断りつづけ、周囲も微妙に誤解したままなりに
「ほかの女と心中しようとしたくせにあつかましいこと言うな!!」
と彼から守ってくれた。
卒業後数年たったけど、いまだに完全に噂を打ち消せていないのが痛い。
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彼氏がすっごく優しい人だった。
大学のサークルで知り合ったんだけど「仏」と言われるくらい優しい慈愛の人で、みんな
「A(=彼)は優しいから」
「人のことほっておけない人だから」
って言ってた。
半年くらいサークルで活動するうちに、本当に本当に優しい人だっていうことがわかって、向こうから告白されて付き合うようになった。
なんていうか「自分の身を呈しても誰かをかばうのが当たり前の人」で、
喧嘩の仲裁に入って、自分が殴られても相手を気遣うとか
そんなようなことはしょっちゅうの人だった。
彼はいつもそんなでよく他人の面倒みてたから、デートがドタキャンになることもよくあったけどそれは
「仕方ないよね」
「ああ、彼ってやっぱり困った人をほっとけないいい人☆」
と思ってた。
そして付き合って一年。
それまで一度も遠出したことなかったから、記念に一泊温泉旅行に行こうよと彼と盛り上がった。
いつものように彼は忙しそうだったから私が計画をたてて、宿を探して、予算内のところがあったから彼にURL送って
「いいんじゃない」
ってことでそこに予約を入れた。
ところが当日、車で彼のアパートまで迎えに行くと
彼の横には見たこともない女の子が。
誰????
彼が言うには彼の学部の後輩らしい。ゴスロリっぽい恰好の女の子。
彼の服の裾をぎゅーっと握って離さない。
「これから温泉行くんだけど…」
という私をものすごい目でにらむ女の子。
彼氏は
「ゴメン、置いてくわけにもいかないから…一緒にいいかな」
私が思わずイヤな顔してるのに気づいたのか、彼氏が顔を近づけて
「悩みがあるらしいんだ。死にたいくらいの悩みだっていうから、ほっておけないじゃん。な?」
とささやいてくる。
その間、女の子は「先輩に近づくな!」という形相で私を睨みまくってる。
「あの子と三人じゃいやだよ。あの子のことぜんぜん知らないし」
と彼にささやきかえしたら
彼氏はいきなりハリキリ
「そうだよね!」
と言いざま、携帯であちこちに電話し
その後輩の友達をかき集めだした。
三時間後、同じようなゴスロリ女の子がさらに2人集まって、出発進行。
テンション高いのは一番最初にいたゴスロリ子(以下A子)と彼氏だけで、彼氏にいいように言われて集められた?らしい他2人(B子・C子)は恐縮しきって私に気をつかいまくっていた。
宿について、さいわい空き部屋はまだあったんだけど、私たちが予約しておいた「離れで、専属露天風呂あり、食事のランクも上」っていう部屋はもうふさがってる。
当然予約した私と彼氏が離れの部屋に泊まるところなんだけど
A子「ええ?A子ランク下の部屋なんていやー!先輩と離れるなんてA子いやー!びえぇーん!」とフロントで騒ぎだした。
「びえーん」と擬音をそのまま口で言う人を初めて見た。
フロントにいた従業員も、ロビーにいた人も唖然とこっちを見てて恥ずかしかった。
B子とC子は真っ赤になって
「やめなよA子」
「そもそもうちら、邪魔してる立場なんだから…」
と止めていたが、A子はなおも口で「びえーん!びえーん!」と両手を目にあてて擬音連呼。
彼氏はといえば、A子の両肩を抱いてこっちを見てにやにや笑ってる。
「俺は悪くないよね?A子がワガママなだけだから仕方ないよね?」
って言いたげなのがみえみえで、それまで意識してなかったけど無意識に今まで積りつもって溜まってたものもあったらしく、そこで急にいろいろ嫌になった。
「わかった、そっちの部屋は彼くんとA子ちゃんで使っていいよ。
私はB、C子ちゃんと竹クラスの部屋に泊まる」
って言った途端、彼氏はほっとした顔になって、A子は両目から手を離した。
その後、それぞれの客室に離れてから
「松部屋と竹部屋じゃ料金2万以上違うから、そっちで払ってね。
あと私と彼くんはもう他人だから、今後二度と話しかけないで。
観光もそっちはそっちで別行動にしてちょうだい。
帰りも私の車には乗せないから2人で勝手に帰ってね☆」
とメールし、旅館の従業員に
「あの2人に私たちの客室を教えないことと、廊下を渡ってこっちの棟に来ようとしたら止めてください」
お願いした。
多めにチップを払おうとしたら「よくあることですから」と固辞された。
よくあることなのか…。
その晩、私たち女三人はお互いに迷惑かけたことを謝罪しあったあと、たっぷり温泉に入り、お刺身や魚介のてんぷらを食べビールを飲んでいい気持ちになり、彼氏の八方美人ぶりを肴にガールズトークしてから安らかに眠った。
翌朝も
「A子は11時前に起きたことない子だから大丈夫です」
とB,C子に言われ、おいしい朝ごはんを食べてから、朝風呂を堪能し、旅館を出て、私の車であちこち観光して写真を撮りまくって帰った。
B、C子は恰好こそゴスだけどとてもいい子たちでした。
その間携帯の電源はずっと切ってた。
彼とA子は三日後に戻ってきたらしい。
寝過ごしてもう一泊するはめになったのに、二日分の宿泊代が払えなくて親を呼びだしたりしてすったもんだしたそうな。
私は旅行から帰ってすぐ親しい友達には
「こういうことがあって彼と別れた」
と報告したんだけど、彼氏とA子が宿代払えずに大ごとになったことが大学に洩れたらしく、情報が錯綜して、いつの間にか
「彼氏とA子が心中旅行に行ったのに、私が身元引受人にされた」
という噂に発展していた。
その後卒業するまで、噂を打ち消すのに苦労しました。
彼氏からは復縁を迫られたけど断りつづけ、周囲も微妙に誤解したままなりに
「ほかの女と心中しようとしたくせにあつかましいこと言うな!!」
と彼から守ってくれた。
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