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部下との秘め事 2【不倫体験談】

少し頭が痛かった。ワインを少し飲みすぎたから、それが効いているのだろう。嫌な痛みだが、嫌な気分ではない。外は相変わらず良い天気だし、昨夜は望外の結果を得られたし。

残業を少しだけして、八時に街で会う事にした。恵舞子は一度家に帰り、タクシーで待ち合わせの場所へやって来た。店は特に決めていなかった。待ち合わせ場所の近くにバーがあったので、そこで飲む事にした。

実は、彼女を待っている間、少し時間があったので近くのオープンカフェでビールを一杯だけ腹に入れていた。緊張と手持ちぶさたをごまかすために。だからなのか、最初から少しだけ俺はテンションが高かったし、少しだけ緊張も解けて心に余裕があった。

店に入り、ビールとそれから少しだけ腹の足しになるものをを頼んだ。腹は減っているのに食が進まない。アルコールばかりを胃に流し込んだ。次第にそれが全身を駆け巡る…

俺と恵舞子は色んな事を話した。学生時代の事、恵舞子と彼氏との事、仕事の事、お互いの家族の事、そしてこの間の事、これからの事。店についてしばらくは向かいあって話していたが、気付いた時には俺は恵舞子の横にいて、そして彼女の手を握っていた。

また、しちゃうのかなぁ、しちゃうだろうな。お互いにそういう空気を感じていたのだろう。俺は、猫に会いたいと恵舞子に言った。恵舞子は猫を二匹飼っている。恵舞子は「うん、いいよ」と言って、俺の手を握り締めた。

タクシーはすぐに捕まった。後部座席で二人は、ドライバーに隠れていちゃついた。そんな事でも、少なくとも俺は、頭の中がグシャグシャになりつつあった。




恵舞子の部屋に入ると、猫を飼っている家の独特の匂いを感じた。そしてそれが、つい四日前に感じたばかりの匂いだった事を思い出した。

リビングで少しだけ飲み直した。肩を抱き恵舞子の髪の香を嗅ぎ、キスをする。恵舞子は、キスですぐにスイッチが入り息遣いが妖しくなる。俺はこの瞬間が好きだ、たまらなく。

「今日は暑かったから、一緒にシャワー浴びよう」そう言って恵舞子は俺をシャワールームに導いた。恵舞子の体は本当にキレイだ。見ているだけでも幸せな気分になる。お互いの体を洗うだけでも、精神的なオルガズムに達しそうな気がした。

時計の針は23時を回ったところだった。

シャワーを浴びた後、ベッドルームで二人はセックスをした。恵舞子は、俺がまださほど高まってないタイミングで達してしまう。途中休憩を入れて、一時間位ダラダラとしながら、最後にようやく俺はイッた。

一定の性的満足を得られた事もさる事ながら、その間に交した会話で精神的に満たされた事の方に意味を感じた。

何故、恵舞子は俺の事が好きなのか?自己評価では、贔屓目で見ても中の中なのに。

「ケイさんには、ふとした時にとてもオスを感じるの」恵舞子はそう言うが、やはり意味が解らない。首を傾げていると、「女だけにしか解らないかも…」と。やっぱり意味が解らない。

その夜は、そんなに遅くならずに彼女の家を離れた。

 

******

薄れて行く記憶の中で、3回目の夜のことを思い出してみる。

その夜、俺の送別会があった。

俺が主賓だから、しこたま酒を飲まされた。二次会、三次会と場は進み、午前一時をまわるくらいに、一旦場はお開きとなった。俺と恵舞子はタクシーで彼女の家へ向かった。

その前・・・

三次会のカラオケボックスで、俺は好きな歌を好きなだけ歌っていた。

もう既にその時期は、彼女への思いは自分の中でかなり整理されており、もちろん好きなことには違いは無かったが、彼女をどうこうするつもりは無くなっていた。酒宴でも、彼女に対して酔いに任せたセクハラまがいのことをし兼ねない危惧も自分の中にあるにはあったが、実際はそういう気持ちにはならなかったし、近づいて会話することすらも無かった。もしかすると、恵舞子の方も予防線を張っており、敏感に俺がそれを察していたからかもしれない。今となってはどうでも良いことではあるが。

そんな状況であったにもかかわらず、場がお開きになる少し前、何故か恵舞子が俺の席に近づき隣に座ってきた。騒がしい店内で会話をするには、自然と二人の距離は近くならざるを得ない。気がつくと、彼女の顔は俺の目の前20センチ位のところにあった。久しぶりに感じる恵舞子の吐息。決して誘っているわけじゃないことは解っていた。単に酔っ払っていたのだろうと思う。

「ケイさんにはお世話になってばかりで・・ずっと、お礼を言いたかった。でも・・・ごめんなさい。」どうしてそうなっているのか解らないが、そう言った恵舞子は既に半泣きだった。泣き上戸の気があるのだろうか?刹那、ものすごく愛しい気持ちに俺はなった。完全にその気持ちは俺の思い込み、勘違いだとわかっていた。でも、止めることはできなかった。二人が接近して会話していることは、周囲の誰も気にしていなかった(様に感じた)。店内の喧騒に加えて、みんながみんな相当に酔っ払っていたせいでもあろうか。

「わかってる。ありがとう。」そう言って俺は恵舞子の手を引き寄せ、テーブルの下で彼女の手を握りしめた。

「最後だから言う。このごろは君の事を考えないようにしてた。でも、こうしていると、やっぱり恵舞子のことが好きでたまらなくなる。最後に、もう一度だけ・・・抱きたい。」

ドサクサ紛れにずいぶんむちゃな口説き文句である。まさしく火事場泥棒。恵舞子からは特に返事もなかった。

三次会が終わり、外に出ると雨が降っていた。恵舞子は雨の街に飛び出しタクシーに乗り込んだ。俺は「恵舞子さんを送ってくわ」と言い残し、半ば強引にそのタクシーに乗り込んだ。恵舞子は俺の同乗を断ることは無かった。ただ、望んでいる訳でもなかったと思う。

タクシーの中で俺は恵舞子の肩を抱きながら、以前のような愛撫は無かったが、必死で口説いていた。タクシーが恵舞子の部屋の前に止まると、俺と恵舞子は恵舞子の部屋へと向かった。恵舞子は否定も肯定もせずに俺を自分の部屋に迎え入れた。また、俺は首尾よく彼女の部屋に、およそ2ヶ月ぶりに潜り込む事ができた。

玄関先で、俺たちは抱き合い、そしてキスをした。


?2回目と3回目との間に1?

話は1~2ヶ月戻る。

その間、部下としての恵舞子は有能に仕事をこなしていた。また、俺の方は俺の方で、それを一切考慮する事も評価する事もなく、彼女を自分にとって都合の良い女に仕立てあげようと無駄なエネルギーを使っていた。

何故無駄だったかと言うと、自分に都合の良い女に彼女を作り変える事ができなかったからだ。それは、俺のスキル不足によるものに尽きる。時間とかモチベーションとか彼氏と恵舞子との愛情の深さなんかは、所詮、自分のスキルが足りていたらどうにかなったと俺は判断したし、そうだと思っている。

何ひとつ壊さずに、首尾良く彼女を自分に都合の良い女にするグランドデザインを描けきれ無かったのは、それ以外の理由が見当たらなかった。

とにかく、色々なスキルが俺には欠けていた。きれいに恋愛をしたいとかはあまり考えていなかった。恵舞子をオモチャにするために、どのタイミングでどういう事をすべきかを計りかねていた。恵舞子をどうしたいのか、自分はどうしたいのか、決定的、に思考するスキルと、仮にそれがあったとしても、それを裏付けとして実行に移す意思と準備が足りなかった。

俺は、いわゆる鬼畜にはなりきれなかった。あらゆる局面で、最後はイモをひいた。腹の括り方が分からなかったのだ。

 

流れを戻す。

 

恵舞子の唇・・・

およそ、2ヶ月ぶりのキス。それまでの間、それぞれの連れ合いと幾度と無く重ね合わせた唇。連れ合いの性器を愛撫した唇。自分のことは棚に上げて、俺は恵舞子の彼氏に嫉妬した。それと同時に、後ろめたさや無意味な優越感などが綯(な)い交ぜとなった。玄関先のコンクリートの上で、靴も脱がずに俺は恵舞子の髪の毛をまさぐりながら、恵舞子は俺の頬を両手で挟みながら、舌と舌とを絡ませた。

舌そのものが個別の生き物のように絡み合い、幾度と繰り返される唾液の交換、漏れ聞こえる恵舞子の喘ぎ声・・・しびれるような刺激が頭の中を駆け巡り、尋常ならざる興奮状態にありながらも、割と頭の中は冷静だった。俺はそこではその他の一切の愛撫はしなかった。また、そうしたいという強い気持ちは確実にあったし、唇から伝わる以外の刺激を欲していたが、恵舞子にそれらを求めることもしなかった。そこから未来に向けての限りある共有時間を惜しんでいたからだ。飽きるまで恵舞子のそばにいたかったからだ。挿れて腰を動かすだけがセックスじゃないし、挿れたいという表現では表現しきれないほど理性がぶっ飛ぶまで、そのままで構わない。俺は強くそう感じていた。

ふと、恵舞子の右手が俺の下半身に伸びてきた。時間経過の感じ方について、実際は思ったより長かったり、思ったより短かったりするのは往々にしてある。そのときまでの時間をストップウォッチで測った訳ではないので、正確にどのくらい時間が経過したのかはわからないが、恵舞子とは相当長いキスをしていたはずだ。これも錯覚かもしれないし、そういう風に格好をつけたいだけなのかもしれない。

恵舞子が俺のモノに触れる瞬間に、俺は恵舞子のその手を掴んだ。ひんやりとした感覚が下半身に伝わった。先っちょが濡れていたからだ。頭の中が冷静でも、体はコントロールしきれない事に気づいて少し切なくなった。

一方、恵舞子には俺の魂胆はわからなかっただろうから、彼女の気持ちのままに行動に移したのだろう。その掴んだ右手を恵舞子の背中に後ろ手にして、俺は彼女を彼女の玄関室の壁に押し付けた。すこし興奮が高まった。同時に、恵舞子の左手をねじり揚げるようにして、同じように壁に押し付けた。

唇の凌辱に起因する更なる興奮・・・結局のところ、俺は彼女の部屋に上がるべく靴を脱いだ。全く、耐性の無い人間だぜ。そう自嘲しながらも、それならそうと開き直って恵舞子のカラダを楽しもうと決めた。

恵舞子の唇から離れ、束縛した恵舞子の両手を解放し、そしてもう一度キスをしながら恵舞子の髪の毛を弄った。程なく、俺は唇を恵舞子の耳元に移し「シャワー、一緒に浴びないか?」と提案した。

それを受けて、恵舞子は黙って靴を脱いだ。


?タクシーの中で口説いたことと彼女の憂鬱?

タクシーの中でのことを少し思い出したので書き留めたいと思う。いつまでも、うだうだしている自分の心の中を情けないものと感じつつも。

とにかく必死で口説いた。口説いている俺も恵舞子も相当酔っ払っていたので、大声で会話をしていたものと思う。

「俺のこと、好きか?」

「好きに決まってるじゃないですか。でも、ケイさんには家族があるし、私には彼氏がいるし…すごく悩んで結論出したのに。」

この間、随分口説いては彼女に精神的な迷惑をかけ、最終的にはこっぴどくふられた経過があった。あの夜はお互いの自我が崩壊するまで飲まなくては、あのような形で再び交わることなどなかったのだろう。

「やっと、きれいにサヨナラできると思ってたのに。本当にお世話になったから、その気持ちだけを伝えたかっただけで、誘ったつもりはなかったのに…断りきれない自分も嫌いです。」

ならば、俺をタクシーに乗せるなと、少しムッときたが、それよりもそのときの俺はなんとしてでも恵舞子を抱きたかったから、その言葉は性欲で無理やり押さえつけた。

「うん。色々ごめんな。でも、好きだから仕方が無い。これも俺の単なるわがままだって事は自分でもわかっているんだ。でも、コントロールできない。」

物は言いよう、嘘じゃない、方便だ。自分の本心を上手く包み込んで表現できたのだろう。首尾よく俺が恵舞子の家にあがりこめたのは前述した通りであることから、一応の成果があったといえる。

そのときの恵舞子は諦めの心境で俺を自室に迎え入れたのだろうか。ただ、今となってはどうでもいいことなんだが。とにかく、三度秘密の扉を二人であけてしまった事実があるだけだ。

<続く>

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職場・取引先など | 【2015-12-04(Fri) 22:10:43】 | Trackback:(0) | Comments:(0) | [編集]
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