知りたくなくて失踪した 1
俺と彼女は小学校の頃からの幼馴染だった。
いや、それ以上の、何て言うか、兄妹みたいな感じだった。お互いの家族も生まれた時から顔見知り。
高校を出る頃には既成事実ではないけど、『貴志君と恵理が結婚するのが楽しみだわ…』なんて、彼女の母親がのたまうほど、親密な関係だった。…って言っても、Hは無し。キスはしてたけど。
初めてHしたのは大学二年の冬。一緒にスキーへ言った時。二人だけで行きたかったのに、両家族まで付いて来て。ちょっとした家族旅行だった。俺も彼女も一人っ子で、親馬鹿なんだろうか…。
三部屋予約取って、俺は恵理と一緒の部屋だから、と宣言すると、俺と彼女の母親に冷やかされた。
今となっては、何と言うか…いい思い出。で、彼らの期待に応えて?初めて結ばれた。
正確には、三泊四日の旅行の、三泊目の夜なんだけど。
一日目、二日目は全然入らなくて、彼女もすごく痛がってて…血は出なかったけど、初めてだった。俺はそう信じてる。それに、その頃の彼女は、俺に嘘をつける程、器用な女じゃなかったから。
俺と彼女は別々の大学で、俺は三流大学の経済学部、彼女は中堅所で仏文学を専攻していた。
ちなみに、俺よりも彼女の方が頭が良かった…。当然、就職でも差が付いた。
俺は小さな機械製作所の営業兼事務として、彼女はネットベンチャーと呼ばれる企業へ。
就活で腐り切ってた俺に、彼女は優しく言ってくれた。『しばらく働いたら、何か資格でも取ればいい』って。
さえないサラリーマンになった俺と、美人で、頭もいい彼女…釣り合わないなァ、なんて、自分でも思ってた。
彼女と幼馴染で、一緒にいる時間が彼女の親の次に長かった存在だから、こんな俺と付き合ってくれて、好きになってくれたんだ。そう信じてた。俺は絶対、彼女を幸せにする、誰よりも…本気でそう、心に誓ってた。
大切な彼女だから、Hも恐る恐る、い、いいかなー?なんて、お伺い立てて、前戯も本当に延々と…みたいな。
とにかく、俺は大切にしてた、彼女の事を。
お互い社会人になって、五年が過ぎた。俺も彼女も24歳になってた。
ある日、俺は彼女の父親から居酒屋に誘われた。初めて俺の携帯に着信が入って、誰だろう、見慣れない番号だな…なんて、出てみると、彼女の父親。
知った顔だけど、その時は何故か目茶目茶緊張した。二人だけで飲む酒。味なんて覚えてない。
何を食べたのかも覚えていない。静かな時間が流れた。そんな気がする。
他愛も無い会話の後、彼女の父親は一言、『そろそろ嫁に貰ってくれないか』と言い、そして軽く頭を下げた。
俺は泣いた。恥ずかしいけど、鼻をすすり上げていたと思う。
涙が止まらなくて、何度も何度も、絶対幸せにします!なんて言ってた。その日、俺は家に帰ると両親にこの事を報告して、これからも彼女を宜しく、と頭を下げた。
確か親父は『任せろ』、お袋は感動して目が潤んだまま、何もいえなかったと思う。
その後、今度は彼女の家に行って、改めて挨拶した。先程はどうも、みたいな感じで。
彼女はまだ帰って来てなくて、俺はさっきまで一緒に飲んでた彼女の父親と、母親に、『恵理と一緒にさせて下さい』みたいな事を言った。
婚約宣言…何か恥ずかしい、今思い出すと。
後ろから親父とお袋もついて来て…いや、まさか後ろから付いてくるとは思ってなかったんだけど、家が近過ぎて、いても立ってもいられなかったんだと思う。
三人で彼女の実家に上がり込んで、五人でビールを飲みながら昔話を…いや、ただの羞恥プレイでした。
俺が覚えてない事を次から次へと、コイツら…俺と彼女の秘密の暴露大会を始めやがる。
『実は貴志君と恵理が○○でキスしてるの知ってたの』とか、お袋と彼女の母親が喋る喋る。
俺は、彼女の父親に聞かれたくない話ばかりで、もう何処かへ逃げ出したくて。来るんじゃなかった、と少し後悔したり。
夜中の12時過ぎに、彼女も帰って来て、『あれーどうしたの?みんなで』と聞かれたと思う。
席を外して、玄関の所まで連れて来て、小声で今までの経緯を話したら、すごく喜んで…でも、一番最初に私にちゃんと言って欲しかった、と言われて、そりゃそうだよなァ…と少し後悔したり。
今更、面と向かって言うのも馬鹿と言うか、恥ずかしかったけど、『結婚しよう』と彼女に言ったよ。
声は上ずってたと思う、間抜けだ俺…。
彼女は『幼稚園の頃から貴志のお嫁さんだったよ…』って。
俺は思い切り抱き締めてた、彼女の事。…それも全部見られてたけど、皆さんに。後々まで話の種にされるのが辛い。
俺はその頃が一番幸せでした。本当に幸せだったよ。
月給26万程度、ボーナスカットも当たり前だったけど、彼女と一緒にいられるだけで幸せだった。何て言うか、彼女の事を考えるだけで楽しくなれて、俺は思春期?みたいな。
マリッジブルーの逆バージョン、まさにハイな感覚。どっちの家に住むかとか、新しく借りるか、とか、色々考えてた。
その頃、彼女はいつも仕事が長引いて遅かったけど、全然気にしてなかった。
マメにメールはくれるし。全然怪しい事もなかったんで。
俺が彼女を意識し始めたのは小学校一年から。意識って言っても、あーいるいる、みたいな。
存在の認識って言うのかな。でも、彼女は幼稚園の頃から俺に目を付けていたんだと。
俺と恵理って幼稚園の頃、一緒の組じゃなかったよな?何で俺の事知ってんの?って聞いたら、俺は全然覚えてないけど、色々俺との思い出とやらがあるらしい。
俺は全く覚えてないから、でも、覚えてない、なんて言うとマジ切れされそうな雰囲気だったんで、ああ、そうだよなーなんて、覚えてるフリしてやり過ごしたけど。そんなに一途に想われてたなんて…とまあ、少しノロケてみました。
婚約してから、安心したのか、少し会う機会の間隔が長くなってて。
いや、彼女の仕事が忙しくて。お互い仕事もあるし、無理に時間作って会わなくても、この先嫌って言う程一緒にいなくちゃいけないんだから…みたいな。
俺は安心しきってた。
ちゃんと指輪を渡さないと…なんて考えてて、こっそり宝飾品店巡りしたりしてて。
店員さんと話すと緊張しますね、アレ。もう、話し掛けたら絶対買わないといけないんじゃないか、って。
俺は元々気が弱いんです、ええ。しかも優柔不断だし。結局買えなくてマゴマゴしてたんだけどさ。
10月の彼女の誕生日が迫ってた。俺はまだ指輪すら買えなくて。
もう、いっそ彼女自身に選ばせるか、って腹をくくってた。俺のセンスだとダメっぽいし。
一生大切にしてほしいから、彼女の選んだ物で…って。その時、実は、婚約指輪兼結婚指輪って考えてました。セコイ男でスマソ。でも別々に二個買うのもなーなんて思ってて。
で、彼女の誕生日。この日は早く仕事切り上げてくれよな、って言ってあって、ドトールで待ち合わせ。
俺はいつも待たされる。遅っせーとか、言いながら。彼女はゴメーン、なんて可愛く謝って。…馬鹿ップルでした。
彼女がポーチをパカッと開けたんです。そしたら、少し大きめの、水色の紙が見えた。水色の紙袋が折りたたんで、入れてあったんだと思う。間違いなくティファニー。つい聞いちゃったんだよ、ティファニーの袋?って。馬鹿だな俺。
彼女は動揺したよ。俺よりも気が強くて、絶対尻に敷かれるよね、なんて彼女の母親からも言われてて、俺も、まあ、彼女がしっかりしててくれて、リードしてくれるからいいかなーなんて思ってて、そんな彼女が少し慌ててた。
でも、今思うと、ポーチに入れるには無理があるサイズだよな、紙袋。
畳んで無理矢理押し込んでるって感じ。で、俺は大馬鹿野郎で…期待しちまったんだよ、それが俺へのプレゼントかってw 彼女の誕生日に何故、彼女が俺へプレゼント…orz
プレゼント交換?とか、今思い出すと馬鹿馬鹿しいけど、何でかそう勘違いしちゃたんです。
何々?見せて…って、追求しちゃったのさ。彼女は、紙袋を取り出した。でも、何か行動が変。
テーブルの下に手を潜らせようとしてモゾモゾ。紙袋の中身を出そうとしてるのがバレバレでさ。
はい…って、手渡されて、紙袋はやっぱりティファニー。
ティファニーいいよねー…なんて言ってる俺。実はティファニーのシルバーリングもいいかな、なんて思ってて。でもその時は、買わなくて良かったと思ってた。
だって彼女がティファニーの紙袋を持ってるって事は、ティファニー以外の、意外性のある奴でないとダメだ、みたいな。ちょっとホッとしてて、あー中身を俺にくれるのか???なんてドキドキしてて。
でも、何となく、くれる気配がないんで、聞きました。
中身は?って。固まってたと思う、彼女。あー、とか、うん、とか。変な頷きの後、ゴメンね、ゴメンね、と繰り返して。
俺もよく分かんなくて、まあいいか…と。で、指輪何欲しい?俺、自分で買おうとしたんだけど、分かんなくて…
みたいな話をして、喜んでくれた、その時は。
『ホントに???』って。ドトールを出て、彼女と指輪を買いに行きました。カード使ったけど、限度額ギリギリの18万。安いのか高いのかよー分からん。
オーソドックスな感じの、普段でも付けていられる様な、小粒のダイアモンドリング。
彼女はそんなに細い指じゃないんだけど、すごく似合ってたよ。色白な方だったし。
さっそく指輪をはめて、わー…とか言ってる彼女に萌えました。
やっぱり可愛いわ、この子って。ご両親にも報告して、もう結婚秒読みって感じでした。
いや、まだ具体的に日取りとか、全然決めてなかったんですけど。
年明けて、春にでもどう?みたいな。かなりのんびりしてました。どうせ逃げていくもんじゃないし。
それ以前に、お金が無くて。さすがに親に全額負担はさせられないし、俺の貯金は二桁しかなくて…。
お金が貯まり次第ねー、なんて、冗談を言い合ってました。
11月、俺は初めて彼女の会社に呼ばれました。今まではロビーまでしか入れなかったけど…
って、ズカズカ入ってく勇気もないし、迷子になりそうだし。警備員いるし。
仲人さんになる人が、彼女の上司だそうで、ご挨拶です。仕事の合間を縫って、時間作って。
おー、やっぱスゲー、と感動でした。オフィスの天井がウチの会社よりも高い高い。ああ、やっぱ違うな、なんて、変な所で差を見せ付けられました。
応接スペース?みたいな、仕切りのある所に通されて、ぎこちない挨拶をしました。
仲人の上司は、30台後半かな、結構若く見えましたよ。俺よりは格好いいし。
俺と彼女は並んで頭を下げて、まだ日取りは決まってないんですけど、仲人の予約をw とか何とか。
快く引き受けてくれて良かった。ま、部下から頼まれて嫌とは言えないと思うけど。職場の規模と言うか、俺のトコはショボくて、披露宴の時の事を考えると、やっぱり頭数の揃う彼女の会社の人間の方が頼れるって事で。仲人。
俺の上司からは嫌見を言われましたけどねw
何で向こうの上司?って。仲人って、そんなにやりたいもんなのか。親戚って言うか、親父の兄も仲人したがってたらしい…。誰でもいいんですけど。
俺が考えるよりも、周りはドンドン動いていて。仕切られてました。お互いの両親と、彼女に。
俺は毎日、普通に会社に行ってて、でも、話は前に進んでいて、彼女と会うのは相変わらず遅くなってたけど、嬉しそうに話す姿を見てるだけで嬉しかった。楽しかった。
たまに早く彼女が帰れる時は、彼女が俺の会社まで来てくれて。
俺は待たせるのが悪くて、残務もそこそこに切り上げてたり。上司も大目にみてくれました。
でも、俺は彼女の会社で待った事はなかった。仕事は結婚しても続けるって事で、話はついてて。
だから、年が明けて、春になって、結婚しても、別に何も変わらないと言えば変わらない。
住まいは、お金が勿体無いから、荷物は俺の家、体は彼女の家w みたいな。そんな話で。
考えてみると、俺が待ってた事は無かったんです。大学時代も含めて。
驚くだろうな…なんて、悪戯心出して、夜中11過ぎぐらいですか、ビルの前に立ってました。
出て来た…と思ったら、仲人の上司と一緒でした。俺はかなり動揺して、声とか掛けられなかったんですけど、って、別に何も無くて。会社前で別れてそのまま彼女は地下鉄の改札を過ぎて。
まあ、彼女の尾行なんてする気はなかったんですが、声を掛けるキッカケを失ってしまって。
一瞬でも彼女を疑った俺自身に鬱々としながら、どこで声を掛けようかな…とタイミングと距離を測ってました。
ストーキングはドキドキしますね、アレ。尾行って、バレないかハラハラですよ。変なドキドキ…
結局、乗り換え乗り換えで、家のある駅まで来ちゃいました。
俺は少しだけ、ストーカーの快感を味わった様な気がします。そんな物は理解したくないけど。
バレない様に彼女の後をつけてました。もう、ここまで来ると声を掛けられなくて。
彼女が家に着いたら、遅れて行こうかな、と。外灯もポツポツ、所々消えてたりで、結構暗い所は暗いですよ。
女一人で歩くのは怖いな…なんて、新たな発見と言うか、妙な防犯意識と言うか。もっと早く、一緒に帰れば良かったかなーと。いや、尾行しながらそんな事考えてもね、俺。
で、彼女がアパートに入って行った訳です。まだ新しいアパートの二階でした。は???何で、って、一瞬、お前どこ行くんだよ!!!みたいな。
仲人さんはいい人でした。後々、俺の相談にも乗ってくれて、お金までくれて。
本当は彼女と友達OL?の確か4人でキャアキャア言いながら出てきたんだよ…会社。
キャアキャア…いや、そんなに騒がしい訳でもないんですが。
俺、場違いな気がして声掛けられなくて。バイバーイ、とか言いながらそれぞれ電車乗ってったけどね。
俺は足音を忍ばせて、階段を昇りました。
別に足音を忍ばせなくてもいいんですけど。コンクリートだし、音はあまり出ないと思うんで。
表札にはローマ字のパネル?で、Nishimuraと。
西村…誰???俺は全然理解出来ませんでした。本当は、何が起こってるのか理解出来たと思う。
でも、思考を停止したんだと思う、脳が強制的に、フリーズって。俺はトボトボと帰ったよ、家に。
風呂に入って、ベッドに潜り込んで、それでも、西村西村って、頭の中を西村が駆け巡ってた。西村って誰?
<続く>
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一日目、二日目は全然入らなくて、彼女もすごく痛がってて…血は出なかったけど、初めてだった。俺はそう信じてる。それに、その頃の彼女は、俺に嘘をつける程、器用な女じゃなかったから。
俺と彼女は別々の大学で、俺は三流大学の経済学部、彼女は中堅所で仏文学を専攻していた。
ちなみに、俺よりも彼女の方が頭が良かった…。当然、就職でも差が付いた。
俺は小さな機械製作所の営業兼事務として、彼女はネットベンチャーと呼ばれる企業へ。
就活で腐り切ってた俺に、彼女は優しく言ってくれた。『しばらく働いたら、何か資格でも取ればいい』って。
さえないサラリーマンになった俺と、美人で、頭もいい彼女…釣り合わないなァ、なんて、自分でも思ってた。
彼女と幼馴染で、一緒にいる時間が彼女の親の次に長かった存在だから、こんな俺と付き合ってくれて、好きになってくれたんだ。そう信じてた。俺は絶対、彼女を幸せにする、誰よりも…本気でそう、心に誓ってた。
大切な彼女だから、Hも恐る恐る、い、いいかなー?なんて、お伺い立てて、前戯も本当に延々と…みたいな。
とにかく、俺は大切にしてた、彼女の事を。
お互い社会人になって、五年が過ぎた。俺も彼女も24歳になってた。
ある日、俺は彼女の父親から居酒屋に誘われた。初めて俺の携帯に着信が入って、誰だろう、見慣れない番号だな…なんて、出てみると、彼女の父親。
知った顔だけど、その時は何故か目茶目茶緊張した。二人だけで飲む酒。味なんて覚えてない。
何を食べたのかも覚えていない。静かな時間が流れた。そんな気がする。
他愛も無い会話の後、彼女の父親は一言、『そろそろ嫁に貰ってくれないか』と言い、そして軽く頭を下げた。
俺は泣いた。恥ずかしいけど、鼻をすすり上げていたと思う。
涙が止まらなくて、何度も何度も、絶対幸せにします!なんて言ってた。その日、俺は家に帰ると両親にこの事を報告して、これからも彼女を宜しく、と頭を下げた。
確か親父は『任せろ』、お袋は感動して目が潤んだまま、何もいえなかったと思う。
その後、今度は彼女の家に行って、改めて挨拶した。先程はどうも、みたいな感じで。
彼女はまだ帰って来てなくて、俺はさっきまで一緒に飲んでた彼女の父親と、母親に、『恵理と一緒にさせて下さい』みたいな事を言った。
婚約宣言…何か恥ずかしい、今思い出すと。
後ろから親父とお袋もついて来て…いや、まさか後ろから付いてくるとは思ってなかったんだけど、家が近過ぎて、いても立ってもいられなかったんだと思う。
三人で彼女の実家に上がり込んで、五人でビールを飲みながら昔話を…いや、ただの羞恥プレイでした。
俺が覚えてない事を次から次へと、コイツら…俺と彼女の秘密の暴露大会を始めやがる。
『実は貴志君と恵理が○○でキスしてるの知ってたの』とか、お袋と彼女の母親が喋る喋る。
俺は、彼女の父親に聞かれたくない話ばかりで、もう何処かへ逃げ出したくて。来るんじゃなかった、と少し後悔したり。
夜中の12時過ぎに、彼女も帰って来て、『あれーどうしたの?みんなで』と聞かれたと思う。
席を外して、玄関の所まで連れて来て、小声で今までの経緯を話したら、すごく喜んで…でも、一番最初に私にちゃんと言って欲しかった、と言われて、そりゃそうだよなァ…と少し後悔したり。
今更、面と向かって言うのも馬鹿と言うか、恥ずかしかったけど、『結婚しよう』と彼女に言ったよ。
声は上ずってたと思う、間抜けだ俺…。
彼女は『幼稚園の頃から貴志のお嫁さんだったよ…』って。
俺は思い切り抱き締めてた、彼女の事。…それも全部見られてたけど、皆さんに。後々まで話の種にされるのが辛い。
俺はその頃が一番幸せでした。本当に幸せだったよ。
月給26万程度、ボーナスカットも当たり前だったけど、彼女と一緒にいられるだけで幸せだった。何て言うか、彼女の事を考えるだけで楽しくなれて、俺は思春期?みたいな。
マリッジブルーの逆バージョン、まさにハイな感覚。どっちの家に住むかとか、新しく借りるか、とか、色々考えてた。
その頃、彼女はいつも仕事が長引いて遅かったけど、全然気にしてなかった。
マメにメールはくれるし。全然怪しい事もなかったんで。
俺が彼女を意識し始めたのは小学校一年から。意識って言っても、あーいるいる、みたいな。
存在の認識って言うのかな。でも、彼女は幼稚園の頃から俺に目を付けていたんだと。
俺と恵理って幼稚園の頃、一緒の組じゃなかったよな?何で俺の事知ってんの?って聞いたら、俺は全然覚えてないけど、色々俺との思い出とやらがあるらしい。
俺は全く覚えてないから、でも、覚えてない、なんて言うとマジ切れされそうな雰囲気だったんで、ああ、そうだよなーなんて、覚えてるフリしてやり過ごしたけど。そんなに一途に想われてたなんて…とまあ、少しノロケてみました。
婚約してから、安心したのか、少し会う機会の間隔が長くなってて。
いや、彼女の仕事が忙しくて。お互い仕事もあるし、無理に時間作って会わなくても、この先嫌って言う程一緒にいなくちゃいけないんだから…みたいな。
俺は安心しきってた。
ちゃんと指輪を渡さないと…なんて考えてて、こっそり宝飾品店巡りしたりしてて。
店員さんと話すと緊張しますね、アレ。もう、話し掛けたら絶対買わないといけないんじゃないか、って。
俺は元々気が弱いんです、ええ。しかも優柔不断だし。結局買えなくてマゴマゴしてたんだけどさ。
10月の彼女の誕生日が迫ってた。俺はまだ指輪すら買えなくて。
もう、いっそ彼女自身に選ばせるか、って腹をくくってた。俺のセンスだとダメっぽいし。
一生大切にしてほしいから、彼女の選んだ物で…って。その時、実は、婚約指輪兼結婚指輪って考えてました。セコイ男でスマソ。でも別々に二個買うのもなーなんて思ってて。
で、彼女の誕生日。この日は早く仕事切り上げてくれよな、って言ってあって、ドトールで待ち合わせ。
俺はいつも待たされる。遅っせーとか、言いながら。彼女はゴメーン、なんて可愛く謝って。…馬鹿ップルでした。
彼女がポーチをパカッと開けたんです。そしたら、少し大きめの、水色の紙が見えた。水色の紙袋が折りたたんで、入れてあったんだと思う。間違いなくティファニー。つい聞いちゃったんだよ、ティファニーの袋?って。馬鹿だな俺。
彼女は動揺したよ。俺よりも気が強くて、絶対尻に敷かれるよね、なんて彼女の母親からも言われてて、俺も、まあ、彼女がしっかりしててくれて、リードしてくれるからいいかなーなんて思ってて、そんな彼女が少し慌ててた。
でも、今思うと、ポーチに入れるには無理があるサイズだよな、紙袋。
畳んで無理矢理押し込んでるって感じ。で、俺は大馬鹿野郎で…期待しちまったんだよ、それが俺へのプレゼントかってw 彼女の誕生日に何故、彼女が俺へプレゼント…orz
プレゼント交換?とか、今思い出すと馬鹿馬鹿しいけど、何でかそう勘違いしちゃたんです。
何々?見せて…って、追求しちゃったのさ。彼女は、紙袋を取り出した。でも、何か行動が変。
テーブルの下に手を潜らせようとしてモゾモゾ。紙袋の中身を出そうとしてるのがバレバレでさ。
はい…って、手渡されて、紙袋はやっぱりティファニー。
ティファニーいいよねー…なんて言ってる俺。実はティファニーのシルバーリングもいいかな、なんて思ってて。でもその時は、買わなくて良かったと思ってた。
だって彼女がティファニーの紙袋を持ってるって事は、ティファニー以外の、意外性のある奴でないとダメだ、みたいな。ちょっとホッとしてて、あー中身を俺にくれるのか???なんてドキドキしてて。
でも、何となく、くれる気配がないんで、聞きました。
中身は?って。固まってたと思う、彼女。あー、とか、うん、とか。変な頷きの後、ゴメンね、ゴメンね、と繰り返して。
俺もよく分かんなくて、まあいいか…と。で、指輪何欲しい?俺、自分で買おうとしたんだけど、分かんなくて…
みたいな話をして、喜んでくれた、その時は。
『ホントに???』って。ドトールを出て、彼女と指輪を買いに行きました。カード使ったけど、限度額ギリギリの18万。安いのか高いのかよー分からん。
オーソドックスな感じの、普段でも付けていられる様な、小粒のダイアモンドリング。
彼女はそんなに細い指じゃないんだけど、すごく似合ってたよ。色白な方だったし。
さっそく指輪をはめて、わー…とか言ってる彼女に萌えました。
やっぱり可愛いわ、この子って。ご両親にも報告して、もう結婚秒読みって感じでした。
いや、まだ具体的に日取りとか、全然決めてなかったんですけど。
年明けて、春にでもどう?みたいな。かなりのんびりしてました。どうせ逃げていくもんじゃないし。
それ以前に、お金が無くて。さすがに親に全額負担はさせられないし、俺の貯金は二桁しかなくて…。
お金が貯まり次第ねー、なんて、冗談を言い合ってました。
11月、俺は初めて彼女の会社に呼ばれました。今まではロビーまでしか入れなかったけど…
って、ズカズカ入ってく勇気もないし、迷子になりそうだし。警備員いるし。
仲人さんになる人が、彼女の上司だそうで、ご挨拶です。仕事の合間を縫って、時間作って。
おー、やっぱスゲー、と感動でした。オフィスの天井がウチの会社よりも高い高い。ああ、やっぱ違うな、なんて、変な所で差を見せ付けられました。
応接スペース?みたいな、仕切りのある所に通されて、ぎこちない挨拶をしました。
仲人の上司は、30台後半かな、結構若く見えましたよ。俺よりは格好いいし。
俺と彼女は並んで頭を下げて、まだ日取りは決まってないんですけど、仲人の予約をw とか何とか。
快く引き受けてくれて良かった。ま、部下から頼まれて嫌とは言えないと思うけど。職場の規模と言うか、俺のトコはショボくて、披露宴の時の事を考えると、やっぱり頭数の揃う彼女の会社の人間の方が頼れるって事で。仲人。
俺の上司からは嫌見を言われましたけどねw
何で向こうの上司?って。仲人って、そんなにやりたいもんなのか。親戚って言うか、親父の兄も仲人したがってたらしい…。誰でもいいんですけど。
俺が考えるよりも、周りはドンドン動いていて。仕切られてました。お互いの両親と、彼女に。
俺は毎日、普通に会社に行ってて、でも、話は前に進んでいて、彼女と会うのは相変わらず遅くなってたけど、嬉しそうに話す姿を見てるだけで嬉しかった。楽しかった。
たまに早く彼女が帰れる時は、彼女が俺の会社まで来てくれて。
俺は待たせるのが悪くて、残務もそこそこに切り上げてたり。上司も大目にみてくれました。
でも、俺は彼女の会社で待った事はなかった。仕事は結婚しても続けるって事で、話はついてて。
だから、年が明けて、春になって、結婚しても、別に何も変わらないと言えば変わらない。
住まいは、お金が勿体無いから、荷物は俺の家、体は彼女の家w みたいな。そんな話で。
考えてみると、俺が待ってた事は無かったんです。大学時代も含めて。
驚くだろうな…なんて、悪戯心出して、夜中11過ぎぐらいですか、ビルの前に立ってました。
出て来た…と思ったら、仲人の上司と一緒でした。俺はかなり動揺して、声とか掛けられなかったんですけど、って、別に何も無くて。会社前で別れてそのまま彼女は地下鉄の改札を過ぎて。
まあ、彼女の尾行なんてする気はなかったんですが、声を掛けるキッカケを失ってしまって。
一瞬でも彼女を疑った俺自身に鬱々としながら、どこで声を掛けようかな…とタイミングと距離を測ってました。
ストーキングはドキドキしますね、アレ。尾行って、バレないかハラハラですよ。変なドキドキ…
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俺は少しだけ、ストーカーの快感を味わった様な気がします。そんな物は理解したくないけど。
バレない様に彼女の後をつけてました。もう、ここまで来ると声を掛けられなくて。
彼女が家に着いたら、遅れて行こうかな、と。外灯もポツポツ、所々消えてたりで、結構暗い所は暗いですよ。
女一人で歩くのは怖いな…なんて、新たな発見と言うか、妙な防犯意識と言うか。もっと早く、一緒に帰れば良かったかなーと。いや、尾行しながらそんな事考えてもね、俺。
で、彼女がアパートに入って行った訳です。まだ新しいアパートの二階でした。は???何で、って、一瞬、お前どこ行くんだよ!!!みたいな。
仲人さんはいい人でした。後々、俺の相談にも乗ってくれて、お金までくれて。
本当は彼女と友達OL?の確か4人でキャアキャア言いながら出てきたんだよ…会社。
キャアキャア…いや、そんなに騒がしい訳でもないんですが。
俺、場違いな気がして声掛けられなくて。バイバーイ、とか言いながらそれぞれ電車乗ってったけどね。
俺は足音を忍ばせて、階段を昇りました。
別に足音を忍ばせなくてもいいんですけど。コンクリートだし、音はあまり出ないと思うんで。
表札にはローマ字のパネル?で、Nishimuraと。
西村…誰???俺は全然理解出来ませんでした。本当は、何が起こってるのか理解出来たと思う。
でも、思考を停止したんだと思う、脳が強制的に、フリーズって。俺はトボトボと帰ったよ、家に。
風呂に入って、ベッドに潜り込んで、それでも、西村西村って、頭の中を西村が駆け巡ってた。西村って誰?
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